概要
現代社会における毛皮革業界への逆風下の中、奈良県宇陀市・菟田野毛皮革産地の新たなブランディングプロジェクトが始まります。
私たちは毛皮革産業のネットワークを広げ、情報交換やコラボレーションの機会を作り、技術革新、製品革新の機会創出を各社の歩数で実現することを目指しています。
実施目的
菟田野毛皮革産業には、様々な価値観、規模、技術の企業があり、それぞれ個性を有します。その個性を尊重し、ステップごとにそれぞれのスタンスで関わることのできる体制を目指します。
各企業には本プロジェクトで構築する7つのサステナブル性(持続可能性)を目指すことで、宇陀市や菟田野毛皮革振興センターのご協力のもと、産地全体でこれからの社会に応対できるような取り組みを進めていくことを目指します。
7つのステップ
- 職人の想いを届ける
- 産地の技術や歴史文化を届ける
- 専門分野を超えて協力し取組む
- 持続可能な循環システムへの知識を意欲的に学ぶ
- 自然で生きた証を活かす
- 利活用や副産物の価値を創る
- 生命、自然、社会へ配慮した持続可能な循環を共に目指す
菟田野毛皮革産業の各企業様がそれぞれのスタンスで本プロジェクトに関わっていくことができるよう、7つのステップを設定しています。
ステップ7まで進むと、生命、自然、社会へ配慮したサスティナブルな循環の仕組みを「仕入れ、生産、製造、製品、商品サービスなど生産・流通・市場」の分野を超えて、共に目指す企業が関わることができます。
ビジョン
菟田野毛皮革産地が、変化する社会の価値観に新しい提案ができる『毛皮革産業全体のロールモデル』となること。
コンセプト
人と動物が豊かに共生できる『サステナブルな(循環型)のシステム』を構築し、活用できるものは最大限使用することで無駄を生まず、それを継続できる環境を整える。
カラー展開
2つのカラーをメインカラーに設定しました。
1つは、藍を連想させるカラーとして選定しました。古くから日本で親しまれてきた藍と、柔らかさ・軽さと強度を備えた鹿革は、共に甲冑の制作でよく使用されていたという逸話から共通点を見出し、藍色を毛皮革の象徴として使用しました。
もう一方は、菟田野町を連想させるカラーとして選定しました。古い歴史のある宇太水分神社を彷彿とさせる朱色に、桃色を混ぜることで、伝統と親しみやすさが融合した印象を与えます。
そして、鹿革を象徴するカラーと、菟田野町を象徴するカラーである2色をグラデーションにすることで、毛皮革と菟田野毛皮革産地が新しいステップへと向かう、挑戦の意欲と前向きさを表現しました。
2つの配色のグラデーションは、菟田野でも有名な「かぎろひ」を表現しています。
ロゴ
プロジェクト自体の動物への敬意や丁寧に扱う気持ちを表現しつつ、敷居を高くせず、多くの方に親しみを感じてもらうため、細身のサンセリフ体を使用しました。
本ロゴマークは2つのモチーフであるウサギ「菟」とシカ「鹿」が融合しています。
「菟」のモチーフは、菟田野町の名前にもある「菟」が兎の異体字であること、毛皮の初期生産がウサギから始まったことが関係し、シルエットで表現されています。
「鹿」のモチーフは、本プロジェクトの菟田野皮革産業の要であり、奈良県の象徴でもある「鹿」を彷彿とさせる模様で表現されています。
菟田野町を象徴する「菟」と「鹿」が、手を取り合い、新しい菟田野毛皮革産地を表す「月」へ向かってステップアップしていく様子をロゴに表現しました。菟田野毛皮革産地で加工された革製品を手にとってもらうことで、物の価値を改めて見つめ直してもらいたい想いをこめました。
さまざまな物が、安価で簡単に手に入る便利な世の中になった反面、物に対する意識はぞんざいになり、簡単に捨てられるようになったと思います。そんな今でこそ、動物の命が、丁寧に鞣され仕上げられた革製品を持つことで、簡単には捨てず、物を大切に扱うことを改めて考える機会を創出したい想いをこめました。
制作物
プロジェクト開設パネル、ラベルデザイン、ロゴ、紙袋、紙箱、ラッピングステッカー
プロジェクト解説パネル
展示ブースの一角に展示・貼り付けし、主に菟田野町と毛皮革の関わりや、UTANO STEPの説明などを記載しています。ポスターを見て、本プロジェクトの概要や背景をしっかり理解いただくことで、製品により一層愛着を感じてもらう効果が期待できます。
紙袋
購入いただいた革製品を入れるためのものです。前面はグラデーションカラーのロゴマークがあしらわれたシンプルなデザインですが、側面は、全体がグラデーションカラーで覆われており、シンプルさに固着しすぎない遊び心を追加しています。また、シンボルマークもアピールしています。
紙箱
本プロジェクトで制作した製品を入れる箱です。蓋の中央にメインカラーの藍を連想させる青でプリントされたロゴマークがデザインされたシンプルなつくりになっています。製品の価値をアピールできるよう、見た目もつくりもしっかりとした印象を与える貼箱を使用しています。
ラッピングステッカー
袋の封をするためのステッカーです。メインカラーを使用したグラデーションがメインとなっており、大きく目立つ部分でないことから、他制作物より遊びの要素を多く加えています。本プロジェクトのデザインスタイルに合わせて作成しました。循環を連想させる円を使用したり、シンボルマークをリボンのようなデザインにしています。
さらに遊びを加えたデザインも制作しました。宇陀市の地形をかたどったものは、菟田野町のアピールも兼ねています。
プロジェクトを通して
菟田野毛皮革サステナブルプロジェクトは、「人と動物が豊かに共生できる『サステナブルな(循環型)のシステム』を構築する。活用できるものは最大限使用することで無駄を生まず、それを継続できる環境を整える。」をコンセプトに、様々なプロが関わって模索し、挑戦することができる機会を創出するための基礎を作るところから始まりました。
菟田野毛皮革産業の各企業が、それぞれのスタンスでプロジェクトのステップを登っていくことができる仕組みにより、各企業がそれぞれの方法で、新たな価値の創出に貢献することを目指します。
本プロジェクトのビジョンは、サステナブル社会に対応する「菟田野町毛皮革産地が、変化する社会の価値観に新しい提案ができる『毛皮革産業全体のロールモデル』となる。」ことを目指し、業界を超えたコラボレーションによる、新たな生産の仕組みや考え方、デザインを見出すことができれば幸いです。
本格的に取り組むためには、時間を要しますが、その積み重ねの結果、これに積極的に取り組む企業が、毛皮革の新たな価値を創出している企業・団体・ブランドとの交流やコラボレーションを行い、現状よりも活発化することを願っています。