クライエント 奈良文化財研究所
概要
文化庁の前身である文化財保護委員会の附属機関であり、文化財を総合的に研究するための機関である奈良文化財研究所様のパンフレット制作のご依頼をいただきました。
「X線CT技術をより多くの方に知ってもらい、もっと使ってもらえるようにパンフレットを作成したい」という想いをお話ししてくだいました。
まずは知ることから
「X線CT技術」ときいてピンと来る方はどれくらいいるでしょうか。
私たちは、奈良文化財研究所様からX線CT技術を活用した事例が載った資料を最初にいただき、それを読み解くところから始めました。紙面上の情報だけでなく、webやYouTubeなどを活用し、キーワードを紐付けながら理解を深めました。
デスクトップリサーチだけでは、なかなか十分に理解を深めることは難しいと感じている時に、奈良文化財研究所様に、「百聞は一見にしかず、とにかく一度みに来てください!」とおっしゃっていただき、見学に伺わせていただきました。
「100回聞くよりみた方がいい」という言葉通り、それまでいまいち理解できていなかったX線CT技術がとても面白い技術で、歴史を変える力もある、そんなすごい技術だということ、奈良文化財研究所様ではX線CT技術だけでなく、様々な調査が行われていることなど、多くのことを理解することができました。
このことから、デスクトップリサーチだけではなく、現場に行くことの大切さを身をもって感じました。
コンセプトができるまで
あまり馴染みがなく、難しい印象のX線CT技術をどうすればより多くの方に使ってもらえるようになるのか。そのためにはまず、知ってもらう、理解してもらうことが重要だと考えました。また、文化財や土器などマニアックな分野はあまり興味をもってもらえないことが多いため、その印象をいかに払拭し、「使ってみたい」に繋げるか、を考えました。
コンセプトをよりわかりやすく、明確なものにするため、「パンフレット作成を通して達成したいゴール」と「そのゴールを達成するためのデザインの方向性」という2つを作成しました。
「パンフレット作成を通して達成したいゴール」は、「理解浸透」と「興味を持ってもらう」ことと策定しました。X線CT技術を端的にわかりやすく伝え、研究関係者だけでなく、企業や一般の方まで幅広く活用できる技術であることを事例を交えて伝えることで、最終的に「活用したいというユーザーを増やす」ことをゴールとしました。
「そのゴールを達成するためのデザインの方向性」については、「親近感」「ワクワク感」
「先進的」と設定しました。その理由としては、先方の要望として、これまでの研究関係のターゲットだけでなく、一般の方、それもほとんどX線CT技術のことを知らない方までターゲットの幅を広げたい、とのことだったので、できるだけ最初のハードルを低くし、楽しそうなあしらいや内容で興味を持ってもらえるように上記のような方向性にしました。
これらのコンセプトを網羅できるデザインとして
・コラージュ
・手書き風のイラスト
・フラットデザイン
上記の3つを提案しました。選定理由としては、難しい内容を説明しやすく、且つおもしろそうと、興味を持ってもらえる表現がしやすいものとして選びました。
コンセプト
先方との話し合いの結果、コラージュを用いてポップなカラーを踏襲する方向性でデザインを進めていきました。
しかし、決定した方向性のデザインを先方に確認していただいていると、「実は…、デザインはもっと攻めたものがほしい」と胸の内を打ち明けてくださいました。
私たちの中で、より多くの人の興味をひくデザインとは何か、考えながら落とし込んでいるつもりでしたが、よく考えてみると、興味をひくデザインの方向性はもっと多様であることに気付かされました。
そこで、貴重なご意見を反映するため、もう一度コンセプトを見直しました。
「パンフレット作成を通して達成したいゴール」としては今まで通り「活用したいというユーザーを増やす」こととし、そのためのパンフレットの役割を再度整理しました。
ターゲットを、「CTについて詳しく知らない人」「CTに興味自体はある、理解したいと思っている」という人と策定し、「使ってみたい」を誘発するパンフレットを作ることをパンフレットの役割として設定しました。
そのためには「理解してもらう」「おもしろいと感じてもらう」ことがやはり必要で、それに加えて先方が望むようなよりインパクトのある表現とはどのようなものなのか、話し合いを重ね「宇宙・万博・近未来・未知の世界・人類の進歩・古いけど新しい」のよなキーワードが出てきました。
これらのキーワードを基にコンセプトコピーを「未知の世界への誘い」とし、再度デザインイメージを作成しました。「未知の世界」は知らないものに触れるワクワク感もありますが、知らないが故の怖さもあります。その不思議な世界観を目指し、現在取り組んでいます。
しかし、奈良文化財研究所様のご要望は、インパクトはありつつも、より多くの方に知ってもらい、CT技術を活用してもらうことです。そのため、カラーリングをポップにし、手に取りやすいようにする工夫も必要だと感じています。
大事にしたいこと
これまで見え方の部分についてお話ししてきましたが、「文化庁の前身である文化財保護委員会の附属機関」という半民・半公のような立場の機関であることを配慮した紙面にもすることを心がけています。
具体的には、さまざまな研究を行っていることを紹介し、信頼性が保たれた内容にすること、また、他にもX線CT技術サービスを売りにした民間企業はたくさんありますが、奈良文化財研究所様ならではの強みをしっかりと伝えること、そのあたりを紙面の内容に反映できるよう心がけています。