空気感 No.3

ペーター・ツムトアは空気感について、「–あるいは私たちの心を打つ特質を備えているからです。–それが労力を傾けた仕事のたまものである、ということです。私は慰めとなるところですが、建築的な空気感を創り出すという課題には、つまるところ職人的な側面が関わっているのです。プロセス、興味関心、器具、道具類、それらぜんぶが私の仕事に含まれる。私はいまから、設計する建物に空気感を醸し出そうとする際に私自身がどんな感心んい動かされているのか、あらためて自分を見つめ–」としていることから、心を打つものの正体が労力をかけた人間の心・すべてが関わっていることを示している。

No.3では、空気感を構成する4つ目の要素から理解する。

<空気感(アトモスフェア)を形成する9つ>

1つ目「建築の身体」

2つ目「素材の響き合い」

3つ目「空間の響き」

4つ目「空間の温度」

建物にも特定の温度があるとする。ツムトアは、パビリオン建設時に「ほどよくする(テンペリーレン)」という言葉を大切にし、「適切な温度やおとになるように調節をする–調節や調律であるとともに、比喩的な意味で、ばの空気を程よくすること–物理的な温度であると同時に、おそらくは進呈的な温度でもあるからです。私が目にするもの、私が感じ取るもの、私が手に触れるもの、足裏に感じるものの温度なのです。」としている。

5つ目「私のまわりの物たち」

建築空間に人々が身近に置いている物を指している「いかにもそこに似つかわしい、愛着を持って大切にしているものがわかるような、物との深い関係を感じることがある」とノスタルジアに語り、一方「建物に物が入ってくるというイメージ–それらの物は私が建築家として作るわけではないけれども、私が思いをいたす対象ではあるわけです–私の造った建物の、私とは関わりのない未来の姿をかいま見ることができる。–それぞれの空間の未来の姿、家々が実際に使われているときの様子を脳裏に思い描くことは、大きな助けになるのです。そのような空間の様子は、英語だと<A sense of home>と呼べるでしょう」と設計的な視点からも示唆する。

ペーター・ツムトア
1943年スイス、バーゼルに、家具職人の息子として生まれる。 父の元で家具職人の修業後、バーゼルの工芸学校(Kunstgewerbeschule Basel)とニューヨークのプラット・インスティチュート(Pratt Institute)で建築とインダストリアルデザインを学ぶ。

空気感(アトモスフェア)ATMOSPHÄREN
著者 ペーター・ツムトア
訳者 鈴木仁子
判型 変型判 タテ190mm×ヨコ200mm
発行日 2015年7月10日