空気感が作り出す「心の故郷」

ツムトアは、建物の空間に、母の加護のような居心地を感じていることが理解できます。私たちは、地域の人々との関係や資源と深く触れ合っていく中で、その「労力を傾けた仕事のたまもの」と引き換えに、愛着を感じ、故郷に帰するような心持ちになるのです。

空気感は、建築だけではなく、地域の環境の調和の中でも感じます。例えば、咲き誇る千年の古桜を一目見ようと集まる人々や地元の人々の団欒、柔らかな日差しなど、この古桜を主要構造として、様々な素材が調和している情景が心に留まります。

今年も、この古桜と出会えたことに嬉しく感じて、大切な人とその空間に身をおきたいと思う経験はないでしょうか。

私たちのまちづくりの考えで、「故郷は一つではなく、心の故郷も含まれる」というものがあります。

そういった特別な経験だけでなく、日々の小さな経験のなかに「心の故郷」は存在するのではないかと思ってしまいます。

その価値を大切にすることは、母国を大切にすること、アイデンティティを育てることに繋がっているのではないかと思っています。

奈良県宇陀市 又兵衛桜